【恋愛小説】人気者の彼は移り気…⁉イケメンな彼との社内恋愛録。-第4話-

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「田島さんと美貴が付き合ってるって本当?」

休み明けの月曜日、出勤すると綾子に声をかけられ驚いた。彼女は苦い表情で首を傾げている。

「え? そんなこと聞いたことないけど、噂されてるの?」

どうしてそんな話になるのだろう。それはまったく違うことなのに。怪訝な顔を向けると、綾子が声を潜めて言った。

「美貴が周りにそう言ってるみたいで、他部署でも噂になってるの」

「美貴ちゃんが?」

「そうよ。田島さんって、人気があるでしょ?だから、結構騒ぎになってるわよ」

なんで美貴ちゃんがそんなことを言うのだろう。ただただ疑問しかないけれど、こんな噂に振り回される自分はいなかった。

「おはようございます。七海先輩、立ち上がってどうしたんですか?」

ちょうどよく美貴ちゃんの声がして、慌てて振り向いた。

「美貴ちゃん。なんか、噂を聞いたんだけど……」

彼女の本心がわからず、様子を窺い見る。すると、美貴ちゃんはニコリとした。

「田島さんのことですか? 恥ずかしいですけど、ちょっと親密になって。七海先輩も応援してくださいね」

「応援って……」

美貴ちゃんの言葉に、口を紡いでしまう。私たちの会話を聞いていた周りの人たちは、半信半疑の顔を向けていた。

少しの間呆然としていると、ふふっと笑う美貴ちゃんの背後から、智洋くんがゆっくりと歩いてきた。ちょうど、出社をしたタイミングだ。

「加藤さん、困った噂が流れているみたいだけど」

彼は眉を下げ、困惑した表情を浮かべている。美貴ちゃんは、智洋くんの声が聞こえて勢いよく振り向いた。

「困った噂って、なんですか?」

「俺たちが付き合っているって内容だよ」

「え? 別に困ることじゃないと思いますけど」

と、美貴ちゃんはしれっと言っている。本当に彼女は、なにを考えているのだろう。

「困るよ。俺には他に付き合っている女性がいると、伝えたはずだ」

智洋くんの口調は厳しくなり、周囲はさらにざわつき始める。綾子も息を呑んで見守っていて、私も立ち尽くしたままでいた。

「だって、そんなのウソですよね? 結局、誰なのか教えてくれなかったじゃないですか」

「ウソじゃないよ」

呆れたようにため息をつく彼に、美貴ちゃんはさらに続けた。

「もう、田島さんはちょっと優柔不断ですよね。だからこうやって、みんなの前で言わないとわからないかなって思って」

「加藤さん、きみはなにか思い込みがある。目の前に、恋人がいるんだ。誤解をさせないでほしい」

「え?」

美貴ちゃんの笑顔が少しずつ消えていく。そして智洋くんは、私に顔を向けた。

「相原、ごめん、嫌な思いをさせて。でも、誤解だから」

「ま、待ってください。田島さんの彼女って……」

「相原さんだよ」

ア然とする美貴ちゃんに、智洋くんはきっぱりと答えた。もちろん、驚いたのは美貴ちゃんだけじゃなく、周りの人たちも一緒だ。

そして、同じく放心状態の私に、智洋くんは小さく微笑んだ──。

 

「智洋くん、びっくりしたよ。急に言うんだから」

「ごめん、ごめん。でも、俺も反省したんだ。七海との関係をもっと早くに公表すべきだったと」

衝撃的な一日が終わり、私たちは智洋くんのマンションで過ごしている。今日は、彼との交際が周りに知られて、質問攻めにあっていた。

綾子からも、いつから付き合っているのかなど、興奮気味に聞かれてしまった。

彼と並んでソファに座り、私は彼に微笑みを向ける。

「でも、本当はとっても嬉しかった。だけど、まだ業務が忙しいときなのに、それはよかったの?」

「いいんじゃないかな? 加藤さんがああいう噂を流している以上、止める必要があったから。彼女にも周りと分け隔てなく接しようと思っていたことが、裏目に出てしまった」

智洋くんは、私の髪を優しく撫でながらクスッと笑っている。彼のどこかスッキリした顔を見て、安心した。

私のために……と、無理をしたのではないかと心配だったから。

「でも、課長には怒られちゃったね」

「始業前の騒動だったからな。勝手にドラマを作るんじゃないって、絞られたもんな」

そう言いながら、私たちはふふっと笑い合う。課長はそのあと大笑いをし、「テレビに体験談として出す」と言っていた。

美貴ちゃんは、突然のことに放心状態で、しまいには智洋くんに「恥をかかされた」と捨て台詞を吐いて、そのまま早退したのだった。

彼女が明日出社してくるかはわからないけれど、どんな対応をするのだろう。それが不安ではあるけれど……。

「七海、お前がなにか心配する必要はないよ」

「すごい……。智洋くんって、私の考えていることがわかっちゃうのね」

「あたり前。どれだけ七海を見てたと思うんだよ。やっと、彼女にできたんだ。簡単に離しはしないよ」

智洋くんはそう言って、ゆっくり顔を近づけてくる。

「うん。私も智洋くんのことを、誰にも取られたくない……」

目を閉じると、彼の温かな唇が重なった。

明日からは、堂々としていよう。もう、私たちの関係を隠さなくていいのだから。

 

 

<終わり>

 

第4回の連載、ご愛読ありがとうございました!

次回の連載をお楽しみに♡

 

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