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恋愛小説

【恋愛小説】人気者の彼は移り気…⁉イケメンな彼との社内恋愛録。-第2話-

第1話はこちら

 

「それで、引き受けたってこと?」

終業後、私は智洋くんの住むマンションへ向かうと、彼に昼休憩の出来事を説明する。

いつもどおりリビングのソファで話していると、あからさまにしかめっ面をされてしまった。

「引き受けたつもりはないの。もちろん断ったし。でも、美貴ちゃんがその気になっちゃって…」

「何度も断ったけど、加藤さんは七海が味方になっているって思ってるんだよな? それって、やばくないか?」

彼に深いため息をつかれ、少し不満が湧いてくる。口にしてはいけない、そうわかっているのに、つい出てしまっていた。

「そう思うなら、私たちのことを社内に公表してくれたらいいのに」

後悔先に立たず。その意味を痛感するほど、彼の表情がどんどん険しくなってきている。そして、太く低い声で言われた。

「俺が悪いってことか。そうだよな。それなら、ひとまず上司に報告する? 仕事の都合なんてそっちのけで、言っちゃおうか?」

「別に、そういう意味で言ったんじゃないけど……」

「じゃあ、どういう意味? 七海が隠しているのが負担なら、ちゃんと話すよ」

そう言われたものの、彼は相当不機嫌になっている。その言葉が本心でないことくらいわかっていた。

「ごめんなさい。今までどおりでいいから」

それだけ言い残すと、ソファから立ち上がる。足早に玄関に向かうと、ドアを開けてマンションをあとにした。

「なんてことを言ってしまったんだろう……」

数メートル歩いたところで振り返ってみても、智洋くんは追いかけてこない。よっぽど怒っているんだろう。

彼は日ごろから仕事熱心で、愛社精神も高い。周りに迷惑をかけたくなくて私とのことを話さないでいることは、理解していたはずなのに。

駄々をこねたように感じて、自己嫌悪に陥る。肩を落とし、駅へ向かう足取りが本当に重い。スマホを時々確認してみても、彼からの連絡はなかった。

明日出社をしたら、美貴ちゃんにきちんと言おう。智洋くんとのキューピッドはできないと……。

 

「どうしたの、七海。なんか落ち込んでない?」

さっそく顔に出ているのかと、つくづく自分が情けなくなってくる。

「そんなことないよ。そういえば、美貴ちゃんはどこ?」

列の一番端が彼女の席だ。パソコンが立ち上がっているのに、姿がない。

「そういえば、田島さんを呼びつけてどこかに消えたのよ」

「え? 田島さんを?」

「うん。なんか話があるとかって。たぶん、応接室に行ったっぽい」

綾子が視線を向けたのは、フロアの真ん中にある応接室だ。たまにしか来ない来客スペースで、ほとんどが社内の簡単な打ち合わせに使われる場所だった。

その場所にわざわざ行くなんて、なにがあったのだろう。

「仕事でトラブルでもあったのかな?」

「違うでしょ。きっと、告白よ」

「ええっ!? ここで? それも今?」

あまりに驚いて、目を丸くする。いくらなんでも、綾子の言葉は信じきれなかった。こんな業務開始前に呼び出して告白をするという考えが、まったく理解できない。

「美貴くらいなら、するんじゃない? あの子、田島さんのことになると相当息巻いていたから」

「でも、まさか……」

余裕で構えていればいいのに、不安が広がっていく。美貴ちゃんが告白をしても、彼が断わればいいだけの話。それに、断るにきまっている。

それでも胸のざわつきを感じていると、外線電話が鳴って応答した。タイミングがいいのか悪いのか、智洋くん宛ての電話だ。

「繋いでいいんじゃない? 美貴の話は、大事なことじゃないだろうし」

困っていると、綾子にそう言われ、急いで応接室に向かう。たしかに彼女の言うとおりだ。電話の主は大事な取引先だし、智洋くんにお伺いを立てたほうがいいかもしれない。

「失礼します」

ドアをノックしたのとほぼ同時にドアを開けると、目の前には彼の胸に顔を埋める美貴ちゃんが見えた。

「あっ、七海先輩。どうしたんですか?」

驚いたように、彼女は智洋くんから離れる。ここが奥の部屋でなければ、他の人に見られているところだった。

「田島さんにお電話です。大事な取引先からだったので、お知らせに来ました……」

「ありがとう。すぐに出るよ」

智洋くんは私の横を足早に通り過ぎると、デスクへ戻った。いったい、二人はなにをしていたのだろう。

呆然とする私に、美貴ちゃんはペロッと舌を出して、茶目っ気たっぷりに言った。

「見られちゃったなんて、恥ずかしいです。内緒ですよ」

「内緒って……。なにを、していたの?」

ドキドキと、心臓が嫌な音を立てる。智洋くんに限って、後ろめたいことをするはずがない。自分に言い聞かせながら、彼女を強張った顔で見た。

「そんなこと言わせるんですか? 見てのとおりですよ。それじゃあ、私も戻りますね」

「あ、美貴ちゃん……」

美貴ちゃんは、さっと身を返して自席に戻る。彼女の背中を見つめながら、モヤモヤとした思いが広がった。

それは、彼女に対する嫉妬と、智洋くんに対する疑惑だとわかるから苦しい。落ち着かない気持ちでデスクに戻り、業務を再開させるも集中できない。

すると、不意に背後から智洋くんの声がした。

「相原、ボーっとしてないか? どうかした?」

「いえ、すみません」

彼に気づかれたようで、きまりが悪い。仕事に支障をきたすようではいけないのに……。ぎこちない笑みを向けると、智洋くんは私に一枚のA4用紙を差し出した。

「これを発注してもらっていいか? さっきの電話の件なんだが」

「はい、わかりました。すぐにやりますね」

美貴ちゃんとのことは、今は考えないようにしよう。公私混同をしている場合じゃない。

どこか心配そうな顔をする彼に小さく口角を上げてみせると、パソコンに向き直った。智洋くんが、簡単に美貴ちゃんに流されるわけがない──。

 

 

<つづく>

 

次回は2月2日(土)20時に更新!

智洋くんと美貴ちゃんは一体何をしていたのか…!?

 

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