【官能小説】大人の恋愛でイカされて…!ドSのイケメン社長に弄ばれちゃう25歳の私 -第2話-

官能小説|エッチ

第1話はこちら

 

会社からタクシーでこのホテルに到着してすぐに、貸衣装のお店で先輩はベージュのワンピースを、私はピンクのワンピースに着替えて、ヘアスタイルを変えてもらい、メイクもしてもらった。

オシャレをするのは嫌いではない。いつもの自分とは変わった姿――、特に綺麗にしてもらえるのは嬉しい。

……けれど華やいだ気分も、婚活パーティーがはじまると同時にしぼんでいった。

 

私は婚活パーティーがはじまるとほぼ同時に、料理に食いついてしまった。滅多に食べられない豪華な料理を目の前にしていたせいもあるけど、仕事を終えてお腹がペコペコだったせいもある。

一通り食べてお腹をいっぱいにし終えた後、グラスワインを持って壁際に置かれた休憩用のイスに座ると、この場の光景を改めて見て急に気分が冷めてしまった。

参加者達は私みたいに料理や酒をお腹いっぱい食べようとはせず、会話に必死になっている。その姿は先程の先輩と同じで、結婚をするのに集中しているのが見て分かった。

それなのに私は先輩の付き添いで来ただけであり、今は特に結婚することに焦りは感じていない。今がちょうど仕事に慣れてきておもしろいと思えている時期だからかもしれないけど……。

明らかにこの場と自分の気持ちが違うことを気付いてしまったせいで、何だか楽しめなくなった。

まあお腹もいっぱいになったし、ここから婚活に必死になっている人達を見ているのは飽きないんだけど……。

 

と思っていたところに、酔っ払った先輩から声がかかった。

「私はここで見ている方が勉強になります」

「まあ美咲はまだ25だしね。でも今が一番売れ頃かもよ? ホラ、彼なんてどうかな?」

そう言って先輩が指さした方向には、一人の男性を複数の女性が囲んでいる光景がある。

男性は見た目からして他の参加者とは違う。身長が高く、髪は金色を含んだ茶髪、そして目の色も琥珀色。顔立ちは濃いというよりは甘く、女性受けしそうな整い方をしている。その顔でビジネススマイルを浮かべながら、女性達の相手をしていた。

「着ているスーツは一目で分かるブランド物、しかも彼に似合っているから服装のセンスは素晴らしい。身に着けている小物もさりげなくオシャレだし、髪型や立ち振る舞いも上品で自然だから、生まれと育ちも良いわね。外国人……と言うより、ハーフかしら?」

と先輩は探偵みたいに、男性を分析する。けれど確かに先輩の説明通りかもしれない。

複数の日本人女性と話ができるんだから、おそらく日本語が話せるのだろう。それに顔立ちも日本の血がまじっているように見える。

じっと見ていると、不意に彼がこちらを見た――気がした。

「アラ、今、美咲を見たんじゃない?」

「気のせいでは?」

そう言いつつ私はサッと視線をそらす。

あんな目立つ男性が、平凡で地味な人生と容姿をしている私に興味を持つはずがない。

彼に相応しいのはそれこそ可愛らしいお嬢様か、モデルのように美しい女性だろう。職業が芸能人かモデルと言ってもおかしくないほど容姿が整った彼が、私を選ぶことはない。

……と自分に言い聞かせながらも、視線が交わったことに、少なからず私の鼓動は大きく早くなる。

まあああいう男性を見て知っただけでも、婚活パーティーに参加した意味はある――と思っていた時だった。

 

「ヤダ、美咲っ……」

先輩が慌てながらも低い声をかけてきたので、私は何事かと顔を上げる。

すると目の前には……彼がいつの間にか立っていた。

「こんばんは」

「こっこんばんは……」

突然声をかけられて驚いた私は、かすれた声で応えるしかない。

ああ、美形って声も綺麗なんだなぁ……とぼんやりした意識で思っていると、視界の隅で先輩が(頑張って!)と声なき言葉をかけながらこの場から去って行く姿が映った。

……って、見捨てられたっ!?

「俺の名前は光源司(こうげんじ)輝人(あきと)、年齢は32歳。仕事は会社経営で、一応社長」

「あっ、ご丁寧にどうも……。私は花桐美咲と申します。年齢は25歳で、会社で事務をしているOLです」

「そう、美咲ね。楽しんでいる?」

いきなり呼び捨て?とも思わなくもないけど、名前を聞くとやっぱりハーフっぽい。

「ええ、まあ……。光源司さんはハーフですか?」

「良く分かったね。俺のことは輝人でいいよ」

「はあ……」

……そして沈黙。正直、男性から声をかけられるとは思っていなかったので、心の準備が……。

それにこっちを見ている女性達の突き刺さるような視線が痛いのなんのって……。

「あっ、ちょっと用がありますので、失礼します」

立ち上がり、軽く頭を下げてその場から足早に去る。

空になったグラスワインは近くに歩いていたボーイに預けて、私は会場を出た。

 

「ふう……。気まぐれに声をかけないでほしいなぁ」

会場を出ると、人気の少ないロビーのソファーに腰掛ける。

すると何人かの男女が二人っきりで身体を寄り添いながら、何やらコソコソと話をしていた。

先輩に聞いていた話だと、どうやらここへ来ているのは将来の伴侶を求めている男女だけではないらしい。

それこそ一晩だけ、肉体だけの相手を求めて来る人もいるようだ。

まあさっき会った光源司輝人という男性ならば、そういう相手には困らないだろう。

……なら何故、こういう企画に参加したのだろう?

私と同じで、好奇心から? ――有り得る。お金を持っていて、仕事にも恵まれていて、容姿端麗であれば、何かしら特別な刺激を求めても不思議ではない。

「と思う私は性格悪いわね」

「あっ、ここにいたの。美咲、探したわよ」

慌てた様子で近付いてきた先輩は、私の腕を掴んで軽く引っ張る。

「そろそろリクエストカードの発表がはじまるから、会場に戻って書いて提出しないと」

「えっ? それって絶対ですか?」

「もちろんよ。誰か一人の名前は書かないと。ルールだしね」

そういえばそんなことを聞いたような……。でも私がこの婚活パーティーの男性参加者の名前を知っているのは、ただ一人しかいない。

……いや、案外その方が楽かもしれない。

だってきっと競争率は高いだろうし、何より彼が私を選ぶことはない。それならば選ばれなかった女性として、堂々と帰れば良いのだ。

私は顔を上げるとニコッと微笑み、立ち上がる。

「分かりました。実は気になる人が一人いたので、その人の名前を書きます」

「うんうん! せっかく参加した婚活パーティーなんだから、最後まで楽しまなきゃね」

コレで先輩の機嫌を損ねずに済む――とこの時まで、私はそう信じきっていた。

 

第3話へ

 

 

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