「お湯わいたから、お茶いれないと」
「美紀、抱いていいですか?」
「潤くん」
ストレートに潤が聞いてきた。今までは成り行きで体を重ねてしまっていたが、今は恋人同士だ。美紀だって両思いになって、彼と体を合わせたかった。
お湯はポットで沸いたので、そのままにしても大丈夫だろう。覚悟を決めると、潤の前に座り直した。
「ベッドに行こう?」
美紀は隣の部屋にあるベッドに視線を向けた。潤は頷き、美紀の手を引いた。
ベッドの前に立つ美紀と潤。視線を合わせるだけで、お互いが同じ気持ちであるとわかった。早く肌を合わせたい。美紀は潤のネクタイに手を伸ばす。潤はジャケットを脱いで、自らのシャツのボタンを外していった。
そして次は美紀の番だ。美紀がブラウスを脱ぐと、潤がスカートのホックを外す。そうしてお互いの下着を脱がしあい、一糸まとわぬ姿でベッドの前で向き合った。
「なんだか、恥ずかしいね」
「美紀、綺麗だよ」
まだ暗くない部屋の中、お互いの姿がはっきりと見える。美紀は恥ずかしくなり、胸の前で腕を組んだが、それを潤が簡単にはずしてしまう。美紀はどうしていいかわからず、視線を斜めに下げた。
潤は美紀の裸を見るといつも褒めてくれる。モデルのような体型ではないし、褒められると余計恥ずかしくなってしまう。いつもは仕事という鎧をまとっているが、服を脱いでしまうとただの女。潤にふさわしいのか、ふと不安になった。
「潤くんこそ、かっこいいよ」
潤の体こそ綺麗だった。男性に綺麗という表現が合っているかわからないが、無駄な肉はついていないし、筋肉がつきすぎているというわけでもなかった。
細いながらも、引き締まったバランスのいい体。こんなふうに彼をじっくり見る機会がなかったから、まじまじと見てしまった。
「そんなことないよ」
潤は美紀をそっと抱きしめた。お互いの肌が直接触れあうと、美紀は彼のにおいを感じた。潤は特に香水をつけているわけではなさそうだが、さわやかな香料のにおいがした。
そして彼の体臭なのか、ひなたのような安らぐにおいもする。美紀には興奮とともに、安心感があった。今までの彼氏にはない感情だった。
「潤くん、好き」
「美紀、好きだよ」
お互いの気持ちを素直に吐き出すと、見つめ合いキスをした。そうしてベッドに倒れ込む。そうすれば、体に火がついたように高まり合っていく。最初は触れるだけだったキスも、次第に熱をはらんでいく。
「潤くん……、はやく」
「だめだよ、しっかり慣らさないと」
美紀ははやく一緒になりたいと急かした。だが潤はいつも美紀を大切にしてくれる。首筋からゆっくりキスを落とし、胸の先端を指で撫でた。美紀はそれだけで声がでそうになる。
まだ直接触れられていなくても、彼を受け入れたいと秘部は湿っていく。
美紀は潤の手をとり、自分の濡れたそこへ導いた。
「潤くん」
「美紀、本当だ。すごく感じてる」
潤はもう一度キスをしてくれる。そうして、中をゆっくりほぐそうと指をいれてきた。しっとりとしているものの、まだ十分に濡れていないそこを刺激して、指を増やしてくる。潤の指が中で動くたび、美紀はそこをギュッとしめつけてしまう。
先を急かしてしまう体は、自分でも淫らだと自覚しているが、それはきっと潤だからだ。こんな淫乱な面も、きっと潤なら受け入れてくれる。
「美紀、ごめん余裕ないかも」
「うん……来て」
潤が愛撫の手を止めて、美紀に口づけた。すると、入り口に熱を帯びた彼のモノが当たり、勢いよく入ってきた。いつもは美紀を心配するように、ゆっくり入ってくるのだが、彼も今は余裕がないのだろう。急ぐようにグイグイと入ってくる。
そんな彼を、美紀のそこは柔らかくなって迎える。体中に彼を感じて、それだけで意識が飛びそうだ。
「美紀!」
「潤くん、もっと…」
潤が奥に何度も自分のそれをぶつけてくる。そのたびに美紀は声を漏らし、「もっともっと」と何度も彼を求めてしまった。潤も欲望のままに何度も美紀を求める。
そうしてお互いが満足するまで、何度も果てては、抱き合い、夜がふけていった。
「はい、お茶です」
「潤くん、ありがとう」
夜遅く、お互いの気持ちを確かめ合い、その気持ちを体に刻み合うと、満たされた気分でベッドに横になっていた。そんな美紀を見て、潤が気を遣ってお茶をいれてくれたのだ。
美紀はまだ体が火照っていて、ベッドに横になったままだ。マグカップを受け取り、温かいお茶を飲む。
「今度、潤くんのマグカップも買いに行こうか?」
「いいんですか?」
「うん。今度の休み、一緒に見に行かない?」
「はい。じゃあ、行く店チェックしておきますよ」
「お願いね」
初めての潤とのデート。ベッドで横になりながら、計画を二人で話し合う。甘い恋人の時間が過ぎて、また会話が途切れると抱き合った。そして眠りにおちる。
美紀を愛し、大切にしてくれる年下の恋人。心地よい眠気と彼の体温を感じ、幸せな気分がさらに深まるのだった。
そうして朝になり、二人でモーニングコーヒーを飲む。新しい関係で迎える朝は、美紀にとってまぶしいものだった。
<END>
第8回の連載、ご愛読ありがとうございました!
明日からまた新しい官能小説がスタートするので、引き続きご覧ください♡
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