恥ずかしくて、目を瞑った。ちゃぷりと音を立てて、成美は智也を頬張る。やり方がわからないので先端を転がしてみると、頭上から「はぁっ」と溜息が聞こえてきた。
「いいよ…成美ちゃん……」
本当に? そう問いかけたくて、上目遣いで智也を見る。少し頬が赤くなっている。
「慣れてない感じがまたいいっていうかさ……んっ……」
慌てたように、智也は成美を引き剥がした。苦笑して、成美をいい子いい子してくれる。
「おちんちん、溶けちゃいそうだった。今日はこのぐらいにしておこうか」
今日は、という言葉に一瞬引っかかったが、その想いはすぐに吹き飛んだ。智也が突然、凹みに指を差し入れてきたのだ。
「あんっ! ああっ!」
「へへ、やっぱりすっげー濡れてる」
智也はそう言うと、そこをぐちゃぐちゃに掻き回し始めた。ビチャビチャと水音が響き、クリトリスが指の間で激しく揺さぶられる。
「イイ…イイッ…あっ、あっ…ああっ…」
身体が蕩けそうだ。これかクンニなのかな、と一瞬思ったけど、これと似たようなことなら大介にもされたことが無いわけじゃない。
「成美ちゃん。仰向け」
促されて、ベッドに仰向けになる。すると智也は信じられない行動に出た。
彼は彼女の脚を開くと、指で凹みを押し開き、そこに顔を埋めてきたのだ。
「やだっ、何ですかっ?」
「クンニ」
智也はそうとだけ言うと、凹みをべろりと舐め回した後、クリトリスをキャンディのようにレロレロと舐り始めた。
「やっ、恥ずかしいっ! やだっ、やめてっ!」
クンニの正体を知って、頭が混乱した。あんなところを舐められているのだと思うと恥ずかしくて死にそうだった。
でも……
「やっ…やあぁぁ…あん…あぁん…いやぁん…!」
羞恥心が、いつの間にか快感へと変わっていた。甘い汁の中で溺れているみたいだ。子宮から蜜が溢れ出るのが見える気がする。
脳天が快楽に突かれる。智也の舌は、成美に快楽を与える為だけの生き物のように、彼女のそこを、蹂躙する。
「あ、あついよぉ…き、きもちいいよぉ…!」
気持ちいい、という言葉が自然に出ていた。
そして気が付いた。
セックスが気持ちいいって、こういうことなんだと。
大介とのセックスでは、イッたことがなかった。自分がイけなくても、大介が良くなってくれるならそれで満足だと思っていた。
でもそうじゃない。セックスはそういうものじゃない。女の子だって、気持ちよくなってもいいものなんだ。
「クンニきもちいい…きもちいいよぉ……」
泣きながら、喘いでいた。智也は激しく揺すったり、ゆっくりと輪郭だけを舐めたりとリズムを乱しながら、クンニを続ける。
激しくされるとイきそうになり、その度に焦らされて、動きを緩慢にされる。自分の股の間にある智也の整った容姿に、改めて欲情する。
「やだぁ、やだぁ、焦らさないでぇ…」
智也が、ククッと笑う。
「成美ちゃん、淫乱。清楚なのに淫乱とか、最高」
言葉で心を凌辱され、益々興奮する。
「イかせて…お願い…イかせて…」
「その言葉、待ってた。このままクンニでイかせようか」
成美は首を振った。
「挿れて下さい…先輩のおちんちん…それでクリ弄りながら、イかせてください…」
智也は目を丸くした。
「いいの?」
こくんと、頷いた。
大介には、気持ちよくしてもらったことは一度もなかった。今考えると、そんなのフェアじゃない。気持ちよくしてもらうからには、智也にだって同じように気持ちよくなって欲しい。
コンドームを付けた智也が、成美の入り口に触れた。それはそのまま成美に飲み込まれていき、やがて子宮に触れた。
「はあっ、はぁぁん…!」
中身がトロトロで、智也がすんなり入ってきたのがわかった。
「濡れすぎだよ…」
至福の顔をした智也に言われて、今まで大介に抱かれても、こんなに濡れたことが無かったというのに気が付いた。
くちゃ、くちゃ、智也がゆっくりと動き出した。彼が腰を振るたびに子宮にこつんと当たる音が聞こえてくるようで、眩暈がした。
「あんっ、せんぱい…あんっ、あんっ」
身体の中の一番厭らしい部分が、歓喜の声を上げている。智也は律動を早くしながらクリトリスも弄ってきて、成美の四肢が身悶える。
「それっ…それっ…それがいいのぉ…イイよぉ…」
「俺と大介、どっちがいい?」
「せんぱいが…せんぱいがいいよぉ…」
智也が、恍惚とした笑みを浮かべた。
「やべえ…お前、俺好みの淫乱…もっと厭らしくなれ…」
パンパンという音が、激しくなった。クリを激しく揉まれ、中身も掻き回され、成美は白い景色が見え始めた。
あ、これがイく瞬間なんだ……
初めての昇天は、文字通り、雲の上から放り投げられるような感じがした。
それから智也とは、時々セックスをする関係になった。彼は逢う度に色々なことを教えてくれた。男が悦ぶフェラチオの仕方や、Gスポットの存在も身体で教えてもらった。
特に成美がお気に入りだったのは、凹みにローションを塗られ、そこをペチペチと叩かれるという、大介が知るわけもない技だった。
成美が「もっと叩いてぇ」と悶えると、智也は「淫乱にはお仕置きだな」とそのまま果てるまで叩いてくれた。
彼は時々、官能をテーマにしたショートショートを書けと要求してきた。仮にも編集の仕事をしている智也に文章を読んでもらえることが嬉しくて、言われるがままに何本も書いた。
そしてよく書けていると、「ご褒美だよ」と特別なクンニを与えてくれた。成美は智也の前で、条件反射のように脚を開く女になっていた。
自分が智也の恋人ではなく、ただ開発するのが楽しいだけのセックスペットなんだというのは理解していた。だが自分の身体はもう、智也無しでは成り立たないところまで仕上がってしまっていた。
成美は大介と別れることにした。彼が憎かったわけではない。ただ、別に寝る男がいるのに他に恋人がいるという不誠実に耐えられなかった。
要するに成美は、大介の愛より智也との快楽を選んだ。
智也には「なぁんだ、大介、エロくなった成美を喜んでくれると思ったのに」と残念そうに言われた。
就職活動が始まると、成美は、都心の企業ばかりに面接に行った。実家からは通えないところばかりで、一人暮らしなんて金が続かないからと両親からは反対されたが、どうしても智也により近いところに行きたかった。
智也の近くにいれば、週末ごとに彼に可愛がってもらえると信じていた。
そうして内定を取り、安月給でもどうにか生きて行けそうなマンションを見つけ、引っ越しも済んだ頃、智也と、ぱったり連絡が取れなくなった。
彼はもう、自分に会う気はないのだ。繋がらない電話を片手に、彼女は悟った。
自分を開発し飽きた彼は、別の初心な女を探し始めたのだ、と。
成美はこうして一人、満たされない身体を持て余したまま、生活苦の中に取り残された。
<つづく>
次回は4月5日(金)20時に更新!
成美の身体は、このまま永遠に満たされないままなのか…!?
コメント