「んっ……」
「キスしてください、亜加梨さん……」
膝をぐっと押し込められて、思わず力が入った亜加梨に、槙人はキスをねだってきた。首をあげて、ちゅ、とキスを送る。濡れた唇の感触に何故だか安心して、ちゅ、ちゅ、と繰り返し、槙人の肩にすがりついた。
「ん……っふ、ん――っ」
次第に舌を絡ませるのに合わせて、槙人がじっくりと腰を動かし、ペニスがちゅぷりと音を立てて挿入ってくる。亜加梨の中の肉壁を固い熱が擦りあげていくので、背中をぞくぞくと快感が駆け上がった。
「んッ……はぁ、あっ――!」
「熱……っ、は、気持ち……」
優しくゆっくりとした挿入に、亜加梨はもどかしさすら感じた。埋めて欲しかった部分が、どんどん満たされていく。じゅく、じゅく、と中がうねっているのが自分でも分かる。気持ちよくて気持ちよくて、それ以外に何も考えられない。
「はぁ、あ、あ――んぁ!」
「全部、入りました……あー、先輩の中、あったか……やばい……」
ごりゅっと最後に勢いよく中が動き、槙人の骨盤がくっついたのを感じて、亜加梨は「あっ」と声をあげた。腰が勝手にくねくねと動いてしまう。すぐにでも、奥を突かれたくてたまらなかった。そんな淫らなことを考えている自分に驚いてしまう。まるで槙人に頭まで溶かされたみたいだ。
「亜加梨さん、大丈夫です……?」
「ん、大丈夫……、はぁ、槙人くん」
「ん……?」
「好き」
ほとんど無意識に、言葉がこぼれ落ちた。たぶん資料室のあの日に眠れなかった夜から、気持ちを忘れることを決意した翌日には、槙人を男として好きになっていたのだ。
すでに弟じゃなかったからこそ”忘れる”なんて決意がいった。好きだからこんなにドキドキして、満たされて、気持ちがいいのだと、亜加梨はようやく気づいた。
槙人は目を見開いて「へ」と間抜けな声を出した。それから、中でずくんと性器を固くし、しばらく無言で亜加梨を見つめていた。
思わず零したものの、都合の良すぎるタイミングで、嘘っぽく聞こえたかもしれない。妙に空いた間に、そう亜加梨が反省した瞬間、槙人がずんっと腰を打ち付けてきた。
「ひあっ……?!」
「ずるいでしょ、今の……っ、」
「あッ! ッ……っあ! ア……っ!」
箍(たが)が外れたようにピストンが始まり、驚いた亜加梨は槙人の背中にがりっと爪を立ててしまった。それも無視して、槙人はペニスで奥に奥に潜ってくる。固い熱が容赦なく一番奥を擦る。
「ひあっ、あ、ア、ァあっ!」
「先輩、好き、好きです……っは、」
ぱんっぱんっと肉同士がぶつかる音が響き出し、ベッドが軋んだ。突然のことで亜加梨の頭は混乱していたが、後から追いつくように強い快感が身体を走り始めた。
「ひっ……はぁッ、あ、んあぁ!」
「亜加梨さ……、気持ちいですか……っ?」
「うんっ……はぁ、気持ち……っあ! ッア……ッ」
「ふ……、なら良かった……、」
ずるりとペニスが抜ける度に、窪みが内壁をごりゅごりゅと擦っていく。打ち付けられると、子宮まで突き抜けるような刺激が身体を襲った。
槙人はチュッと亜加梨の唇に口づけ、今度は身体を起こして更に激しく動き始めた。膝を広げられて、あられもない格好で揺さぶられると、中の角度も変わる。思わぬ快感に、亜加梨は目を見開いた。
「や、そこ……っ! はぁ、あ! っア、あ!」
「ここ、気持ちい、でしょ、さっき見つけたとこです……ッ」
「ん! やッ! あぁっ、あ!」
敏感なGスポットばかりを狙われ、頭が真っ白になる。ぐちゅんっと音を立てて突かれたと思えば、中でぐりぐりとすり潰すように押され、あまりに強い直接的な刺激に、亜加梨は、あっ、あっ、と喘ぐことしかできない。
「はぁ……っ、亜加梨、せんぱい……っ」
槙人の漏らす声も、余裕がなさそうだ。初めて聞く掠れた声に、亜加梨の心臓はまた鼓動を速くした。
激しく揺すられて、涙なのか汗なのかもはや分からない液体が亜加梨の額を流れ落ちていく。その感触にさえぞくぞくと身体が震えてしまう。
「アッ……! あ、はぁ! は……ッ、まき、とくん……ッあ!」
「……ッ、もっと呼んで、ください、」
「槙人く、……ッ、まき、と、くん、ハァッ、槙、人――ぁあッ!!! あ! アっ……ッ! はあ!」
「亜加梨さ……っ」
槙人は一度奥で動きを止め、亜加梨を掻き抱いた。お互い腰を揺らしながら、強く抱きしめ合う。亜加梨が脚を槙人の背中にぎゅうと回すと、性器同士がさらに密着した。まるで、二人の身体がひとつになったようだ。
「……はあ、槙人くん……っはぁ……っ」
「も、限界……、イってもいいですか……?」
「うん、わたしも……」
奥まで繋がったまま、再び揺さぶるような動きが始まると、亜加梨は自分の中がきゅんと収縮するのを感じた。ぐり、ぐり、とペニスを押し付けるように突かれ、それがだんだんと速くなっていく。
「あっ……はぁ、ア、あ! あ!」
「はァ……っ、」
亜加梨はもう、目の前の槙人と登りつめること以外、何も考えられない。どちらからともなく唇を重ね、ぐちゃぐちゃに舌と唾液を分け合った。
「ん! っんんん――ッ、んん、ふ、ッッ!」
勢いよく奥へ奥へペニスをねじ込まれ、亜加梨の身体が痙攣し始める。耐えるようにつま先にギュッと力が入るが、槙人の腰に脚を回す力はもう残っていなかった。揺すられるがままに、唇から、身体の奥から、快感を貪ることしかできない。
「ん……っ! んん、ふッ……っ」
槙人がラストスパートで腰を打ち付けだすと、二人の結合部からグチュグチュと泡立った体液が垂れていった。ぱんっぱんっと激しい音が響く。亜加梨は槙人のキスの中で、完全に快感に溺れた。
「んんん〜〜〜――――ッッ!!!!!」
「ん、はぁ、イく……っ」
「ぁあアっ――ッッ! イっ……ッッ! 〜〜!!!!!」
びゅくびゅくと槙人が射精した熱を受け止めながら、亜加梨は肩でぜぇぜぇと息をし、そのまま乱れたシーツの中で目を閉じた。
遠くなっていく意識の中で、槙人が額にキスを落としてきたのが分かる。ぐったりとした、幸福な疲れだった。
本当は身体を洗いたいし、槙人と話したいことも山ほどある。しかし達した身体の余韻に逆らえず、亜加梨はそのまま意識を手放した。
<つづく>
次回は3月31日(日)20時に更新!
明日で最終話!ぜひお見逃しなく♡
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