「やさしくするよ」と彼が言いながら、私の肩から胸にかけて手のひらで撫でている。乳房を彼が手のひらで包むと、なんだか軽くなった。おっぱいが軽くなっていく。なにこれ。彼の手のひらに、私の素肌は貼りついてしまったようだった。
「やさしくするから」
「うん。お願い」
「でも痛かったら言ってね」
「わかった」
すると次の瞬間、彼は私の乳房から手を離して、屈んでしまった。その一瞬、おっぱいが再び重力を伴って、わずかではあるけれど肩に震えが伝わった。
え、ちょっと。なにしてるの。
と、彼は私の膝の裏側を少しなでて、さらに太ももに感触があって、その感触は手のひらというよりも少し硬い感じのするなにかで。
ああ。
彼、太ももにキスしたのね。それは彼の唇なんだわ。
やがて彼の腕全体が私の脚に貼りついて、次の瞬間、
「わ」
私は声をあげてしまった。
わわ。なに、なにいったい。
おっぱいが軽くなるどころの騒ぎではない。私の体そのものが軽くなった。
曇っていた鏡が透明に戻り始めていて、裸の私たちの姿が映し出された。彼は、お姫さま抱っこをしていた。鏡の中の私が、なんだか自分じゃないように思えてしまう。
キレイ。あれ、私って意外とキレイなの?
お姫さま抱っこされた私は体重を見失い、くらくらとしている。体の感触は良くわからなくて、彼に持ち上げられて宙に浮いているだけのようにも思えた。鏡の中では彼のあれがピンと立っている。私のあそこにあたりそうで当たらない、そのゆらぐ姿が映っていた。
と、次の瞬間。
「いたっ」
痛い。痛い、痛い、痛い。
「あ。ごめん。痛かった?」
と彼が動いて腕を直す、余計に痛い。すごく痛いよ。
「いっ」
言いたいことも言えずに、ただひとこと。
「やっぱり裸で抱きあげるのは無理があったかなあ」と彼が言う。
どうやら彼の腕と私の太ももと腰の辺りと、とにかく密着している素肌と素肌が貼りついてしまって、ちょっとの動きでも引っ張られて痛いのだ。
素肌を引っ張られて、はがしにくいテープを無理やり剥がされるような状態のまま、彼は私をベッドに着地させる。
ふんわり。
柔らかくて。心地いい。
「もう一回よく見せてもらってもいいかな」と彼が言う。
まだ窓の外は明るくて、カーテン越しに陽射しを感じることができる。私が答えるのを待たずに、彼は私のかかとあたりをつかんで、ぐいっと脚を開いた。
あ。私は操縦されている。そんな気がしてくる。
彼の唇だろうか舌だろうか、私のあそこに当たって、ふわふわとした感触が伝わってくる。さっき体を拭いたのに、もうそんなに濡れているのかな。私の液体それとも彼の唾液、あるいは。
乳液のような感覚だろうか。子供の時に触ったことのあるスライムにも思える。
これは、彼の舌先なのだろう。私の溝を開ききって、鍾乳洞の内側にまで入ってきていた。
どことなく、ざらついた感触が混ざっていて、私はさらなる火照りを感じた。
彼は私のあそこを舐めながら、とんでもない音を立てはじめる。
じゅるっ。
じゅううううう。じゅずずっ。
「あっ」
ダメ、なにか出ちゃう、漏れちゃうダメ。やめないで、でもダメ。
しぼりたての果汁を皿に開けて、表面だけを飲んでいるような音。なんだか下品。すごい、いやらしい。私の液だけじゃ、こんなにならないと思うの。自分ひとりだけで遊んでいるときも、それなりにびしょ濡れになることもあるけれど、ここまでひどいことにはならない。ふと、甘い香りがして辺りを嗅いでみる。特別な甘さは感じられない。が、
『彼の匂いだ』
と私にはわかった。
作り物の香りとは異質な、なにか得体のしれない匂いがする。もちろん私の匂いとも違う。メスじゃない、あきらかにオス。そう思ったとき、私のお腹の奥の方からさらに液体が流れだすのがわかった。
「あ」
やっと言えたのは、それだけ。
言いたいことがあるのだけれど、うく言葉が出てこなくて、ただ声だけが切れ切れに口から漏れ出てしまうだけだった。
「あっ。ああい。っいい。いい」
すると彼は私の腰をつかんで、ふわりと宙に浮かせた。
なんで、そんな力があるの。
まるで布団かぬいぐるみでも持ち上げるみたいに、彼は私の体を持ち上げて浮かせている。次の瞬間、
「いれるよ」と彼が言う。
しかし、もうすでに先端は私の中にあった。
「いいかい?」と彼が聞く。
けれど、もうすでに。
もう来てる、ゆっくりとだけれど滑っている。
「待って…」
「うん」と彼は言うが、抜くことはない。
彼のあれが向きを変えて、私の中を削るように動いた。ゴム帽子を被った少年の頭だと思っていた先端が、いきなりガソリンスタンドの洗車機ブラシのように動いている。
「もっと力抜いてよ」と彼が耳元でささやいた。すごい。ささやきなのに鼓膜が破れるかと思った。
「ちょっと待って」と言いかけるけれど、股間の熱さが声帯を麻痺させてしまう。叫びたいのに叫べない。私は異議申し立てをしたいというのに、体は喜んでいる。
「うん」と彼は繰り返すだけだが、呼吸が乱れているようにも感じられる。
私は浮かびあがったままで、ときどきベッドの柔らかい台地に着地させられるけど、背中は痛みを感じない。
「ああっ」
「ん…」
ぴちゃぴちゃと音が聞こえてきた。彼の皮膚と私の皮膚は一体化して、分厚い素肌に生まれ変わって、貼りついて引っ張られて。むき出しになったクリトリスが、ひくひくしてる。もはや私の意思などおかまいなしに、けいれんしている。
「ねぇ」
もう私ダメかもしれない、このままイキたいけれど、このまま終わりたくないの。ねぇ、ダメなの、もっともっと、もっと来てほしい。ダメこのままじゃイッちゃう!
その時、彼が腰を引いた。
ぬるうっと彼のあれが波のようにひいていく。
とても、ゆっくりと。ああ、そう、その感じよ。絶対に抜いちゃダメだからね?抜かないで。そうそのまま延々と終わりのない状態で抜いて引いて、滑り続けて。
私の壁は、じっとりとこすられていて、彼のあれは鍾乳洞から出て行ってしまいそうだ。
行かないで。まだ。
「すっごいな」彼が私の唇を撫でながら言う。彼のペニスも私の唇を引っ張るように、ゆっくりと外に出ようとしている。が、まだ抜かれていない。一方通行の道ではないのに、ただひたすら、ゆっくりと抜かれている。
「な。すごい。うん、すごい。いいよ」と彼が言葉を続ける。
いいのね。そう。良かった私もよ。いい。うん、すごくいいわ。
「これはもう。うん」と彼は急に、流暢に語り始めていた。語り始めたけれども話の中身がない、ただただ、もうとかこれとかうんとか繰り返すばかりだ。
「んふう」と少しばかり眺めに彼が息を吐いて、私の髪をふわふわっとさせたのがわかる。
「あうっ、んん」
「いいよ。すごくいい、その顔」
なにを言ってるの?
「初めて会ったときから思ってたんだ、すごいキレイ、いい顔してるって。その唇。うん。そう、その感じ。その開きかた。いいよ、すごくいい」
彼が再び流暢に語り始めた。今度は話の意味がわかる。わかるけれども、どうでもいい。そんなどうでもいいことばかりしゃべってないで、もっともっともっと、もっと来てよ!
「はあ…」と彼が、とてつもなく長い息を吐き、私の顔にかかった。前髪全部が風圧で後ろに追いやられる。
「あっ、ああっ…。んあっ。あん」
ダメだ。彼のあれがまた大きくふくらんできて、風船のようだ。
あ。
私の中でスイッチが入る音がした。ピーンと超音波のような音だった。
「あ、あん、あん、んあっ」
私の声が部屋中に響き渡って、私の耳に返って来る。耳から体の幹をまっすぐにつたって、鍾乳洞まで一気に。
もう止まらない。
ダメ、気持ちいい。
誰か私の口をふさいで。なにも漏れないように強く、ふさいで欲しい。あ。ああっ。
私のなかで彼のペニスは膨張しきったかのようで、破裂寸前の風船のようだと感じた。
「すげえいい。なんかさ、ほんと気持ちいい。すげえ、いい。うん。もう、なにこれ」
彼が連呼している言葉は意味があるのかないのかわからなくなっていたが、彼の言葉のリズムにハモるみたいに私の声も漏れている。もう私はだらしない声を漏らしてしまっていて、あっちにもこっちにも、いろいろな液体をばらまいているような気分になっていた。
いきなり彼が私の乳房に触わり、さっきの優しい感触とは異なって、なんだか少し乱暴に素肌をこすった。痛いじゃない、なにするのよ。でも、いい!
いきなり彼が私の乳首に吸いついた。
ついさっきまで、私の乳房は突起でしかなかったけれど、いまは彼に吸いつかれて、どうしようもない生命力をみなぎらせていた。
あああ、いいわあ、この感じ。
彼が乳首を舐めて、吸った。唇が貼りついたまま、手でも揉まれた。意識が遠くなることはなかったけれど、ふとした瞬間にサーッと醒めてしまうような感覚もあって、感情なのか情熱なのか私はもう、びっしょりで、ぐったり。なのに腰は動き続けていて、機械仕掛けのメトロノームとして機能していた。そっか。これってダンスよね。頭じゃなくて、体で感じたまま感じながら適当ぶっこいて踊り続けるの。
いつか必ず、こうなると思っていた。夢見ていた。その瞬間にいま、立ち会っている。
ねえ。
あなたは、どう?
私ね、気持ちいい。いいの。すごく気持ちいいわ。
「うん。すげえ。いい。よし決めた。なあ」
彼が言う。
「あん」
私は歌う。
「もうさ、
おまえ、もうおれの女だから」
「あん」
「わるいけど機嫌とる気なんてサラサラないからな。もう」
「あん」
「おまえ、おれのものだから」
ああっ。
そうしてついに風船が破けた。私の鍾乳洞いっぱいに。
***
天井が白い。真っ白だ。壁紙が張ってあるの?どうでもいいわね、こんなこと。
私は彼の腕枕で、うとうとしながらも、妙にハッキリとした意識を持て余している。
彼は黙ったまま、なんだか寝息を立てているようにも思える。
すぐ耳元で、私の頭蓋骨に呼吸音が反響しているのが感じ取れる。騒々しいのに、すごく静かだわ。
『よかったよ、ほんと』と彼の声が聞こえた。気がする。
「うん」「すごいなんだかこう、おれ、解き放たれたっていう感じだよ、いま」
そう。良かったわね。私もよ、解き放たれたんだわ。
「良かった。すごく」
「そう」
「なんだよつれないなあ。良くなかった?」
「まさかあ」
「だよな。すごい気持ちよかった」
何言ってるんだろ彼。私も。別に何も話なんかしたくないのに、口だけ勝手に動いてしまう。
「こんなに若くてキレイな、すごくいい女性とあんなに気持ち良くなれて。おれもう最高だよ」
「なにそれって感じだけど。まあいいか」
私さあ。別に気にしないからね、あなたが他の女の裸に興奮しながらカメラ構えて写真を撮っているの。
あなたがキレイな女の人の裸に夢中になってちんちんたたせてウハウハいってビクンビクンしていたって。気にしない。気になんかしないわ。嫉妬とかしないし、そういうのやめてとか言わない。だから。
「私さあ」
「うん?」彼が一瞬目を閉じた。よし言おう、言っちゃおう。いま言わなければ、後悔しちゃうわ。
「私さー」
「ふ。だからなにさ」
「ねえ」
私をカノジョにしてよ。これからも続けて、どんどん他の女の写真を撮っていいから。ね、でもその、いま空席のところを。
「うん?」
「私さあ、すごい気持ち良かった」
「おれも、すっげえ良かったよ。痛くなかった?」
ああ、なんて優しいの。その声、その響き。思わず自分の脳内で繰り返してしまった、痛くなかった?痛くなんかないわ、気持ち良かっただけ。
うん、気持ち良かったわよ、と穏やかに言うつもりがなぜか、
「あん」と私が言う。
あん?
なに私。
「かわいいなあ」
「なにが?」
「かわいい。うん、すごーく、かわいい」
なんのこと。誰のこと。
私の意図する言葉は、まったく出てこなかった。どうしちゃったんだろ私。でもまあ、しょうがないか。さっきタイミングは逃しちゃったものね、
『あなたのカノジョにしてよ』だなんて。
『私をカノジョにしてよ』だなんて。
私の体は、まだ火照っているのだけれど、彼の体は冷めている。はっきりわかる。彼は知的な言葉で会話ができる状態になっているから。
「なあ」
彼が言う。
少し起き上がりかけて、私を上から眺めおろしている。
うん。なあに?
私は声を出せない。出したくても出せない。
「かわいいな、やっぱり」
「んふ」
んふ、じゃねえよ私、と思いつつも、もうどうにでもなれという心境に達していた。
彼が私を覗き込みながらゆっくりと降りてきて、唇と唇が触れあった。ああ、キス。キスね。嬉しい。
「かわいい。もうこれでさ、おれの女だからな」
彼が言った。
「反論もあるかもしれないが、いまは認めない。少なくとも、いまは。いいね」
何を言っているのかしら。
「どういうことかよくわからないけど、また私を撮りたいってこと?」
「うん。違いないね。もちろん。また撮りたい。いいよね」
「かまわないわよ」
「うん。じゃあ、さっそくだけど、いま、いい?」
「いま?」
「そう。ちょっとだけ。いまのその顔、その表情、撮らせて」
「うん」私は起きあがった。
「それじゃあ、さっそくだけど、こう」
彼はさっきのように両足を開かせて、すこし陰毛を撫でてから、
「いいよ。すごくいい」と言った。
なにがいいのかしらと思いつつも、
「シャワー浴びてこようか?」と聞いてみる。
「ダメそれは絶対にダメ」
「なんで?洗った方が良くない?」
「それは絶対ダメ、せっかくいい泡が出てるんだから」
ちょっと待って。何を撮っているの。
私は自分のあそこを手でおおった。びっしょりと、ひどく濡れていて、少しも乾いていないままだった。
え。これを撮ったの。
私が彼を見つめると、彼はカメラを構えていて、彼のあれはゴムをつけたまま、とても重そうに揺れていた。まだ外してないんだ。ちょっとだけ、笑ってしまった。
<終わり>
今回は、3話に渡る短い連載でしたがいかがでしたでしょうか。
明日からは4話に渡り、新しい小説を配信します♡
明日からの小説は、幼馴染のエッチなストーリです!ぜひお見逃しなく♪
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