―――・・・
「—――ん…」
肌寒いような気がして、閉じていた目をゆっくり開ける。
「あっ…!!—―――つぅ…いたたっ…」
覚醒しきれていない頭のまま周りを見渡せば、少しだけ薄暗いような気がして壁かけの時計を見る。
時計の針は16時を回っていて、驚きのあまり体を起こしたものの、腰に強烈な痛みが走り手を添えた。
「いたたっ…嘘…私こんな時間まで寝ちゃってた…?—――それよりも…」
自分の体に目をやると、ランニング用のインナーとショートパンツの状態のままで何も変わった事はないのに、体に残る違和感と痛みにさっきまでの出来事がフラッシュバッグする。
夢だ、絶対に夢に違いない…そう何度も自分に言い聞かせながら、恐る恐る手を下着の中に入れる。
――くちゅ…
「—――そ、んな…嘘―――…」
膣からどろりとしたものが流れ、指に絡みついてきた。見なくても分かる…これ―――…精液だ…。
しかも尋常じゃない量が中から出てくる。
私が曖昧な記憶の中覚えているのは、意識が飛ぶ前に出された1回のはず。確かにあの時も量は多かったけれど、今私の中から出てきている量はその時の倍はある。
腰の痛みを我慢しながら風呂場に駆け込む。
インナーは着たまま、ショートパンツを下着ごと下し、浴室で思い切りシャワーのコックを捻った。
「っふ…んんっ・・・はぁっ・・・」
頭からお湯をかぶりながら膣内に注ぎ込まれた精液を指で掻き出す。出しても出しても出てくる精液に、涙が込み上げてきた。
どうしよう…私…何てことを…浩司さんにも出された事なかったのに…今日初めて会ったあんなチャラチャラした人に体を許してしまうなんてっ…
唇を噛み締め、涙目になりながらお湯と一緒に流れていく精液を見て罪悪感に苛まれる。
あの時私はどうかしていた…セックス自体久しぶりだったから、きっとおかしな行動を起こしてしまったんだ。そうだ、そうに違いない。
両腕を前で交差させ、自分を抱きしめるように手を握った。ぺたん、と浴室の床に座ったまま私はただ妊娠していない事を…浩司さんにこの事がバレないように…そう願う事しか出来なかった。
「—―ただいま、愛奈。…ごめん、風呂入って着替えたらまたすぐに仕事に行かなきゃならないんだ」
翌朝6時半過ぎに帰ってきた浩司さんからは酒と、嗅いだことのない香水の香りがした。
「—――そう…分かったわ。お風呂は沸いているから…」
玄関までお出迎えしてかけられた言葉は、また仕事の事なのかと悲しくなった。仕事なら酒の匂いも、女の人が使う香水の様な匂いもしないはずだ。
なのにこの匂いは何?本当に仕事だったの…?
そう言いたかったのに言葉に出す勇気はなくて、渡された鞄を受け取って微笑む事しか出来なかった私は、本当に浩司さんの家政婦のようなものなのかもしれない。
「あぁ…すぐ出るしご飯はいらないから」
「分かったわ、気にしないで」
ネクタイを解きながら浴室へ向かう浩司さんの後姿を見つめながら、持っていた鞄をぎゅっと抱きしめた。
「—――はぁ…、なんでこんな事になったのかな…」
付き合っている時と結婚した当初はあんなにラブラブだったのに。
もう私を求めてはくれないの?
ねぇ、浩司さん。浩司さんが私を求めてくれないと私は―――…
あの人に奪われそうになる。
心も―――体も。
「多分今日も帰れないと思うから、ご飯はいらない。—――じゃあ、行ってきます」
「…分かった。…いってらっしゃい、浩司さん」
風呂から上がった浩司さんはすぐに着替えを済ませ、新しいスーツに着替えると家を出て行った。
ぱたん、扉が閉まって大きくため息をつくと、鍵をかけようと手を伸ばした。
「あーいなっ。おはよ~!」
「っ…!!なっ…なに勝手に入って来てるの!っていうかなななんで裸なの!!っ出て行って…!」
入れ違いで入ってきた芝崎さんは全身に衣服を纏っておらず、裸だった。—――いや、詳しく言えば、腰にバスタオルを巻いただけの状態だった。
金色の髪は少し湿っていて、がっちりとした体型から男の人独特の香りとセクシーな香水の香りがして、思い切り顔を逸らした。
鍛えているのか体は全体的に締まっていて無駄な肉がなく、腹筋も割れているその体をちらちらと見てしまう。
腰に巻かれたバスタオルは、見えそうなギリギリのラインで巻かれているせいか、いつタオルが落ちてもおかしくはない部分に自然と目がいってしまった。
「愛奈~?なぁ~にそんな俺の股間見てるの?エッチだなぁ。そんなに俺のちんこ欲しくなっちゃった?」
「なっ…!ば、ばか!!変な事言わないで!そんなわけないじゃない!それよりもなんでそんな恰好なの!?」
にやにやしながら顔を覗き込んできた芝崎さんに、顔が熱くなりふい、っと顔を逸らす。そんな私の反応を楽しそうに見ながら、芝崎さんが耳元に顔を近づけてきた。
「愛奈ぁ、風呂貸して?俺んちの風呂なんか壊れちゃったみたいでさ~…」
「は、はぁ!?だからってなんでうちなの?彼女とかの家に行けばいいじゃない!」
「俺、彼女いねーもん!セフレとか結構いたけど、俺今好きなの愛奈だけだけだから切っちゃったし。—―だからさ、ダメ…?」
「んっ…!」
耳元に息を吹きかけながら熱っぽい声で言う芝崎さんの言葉に、顔が赤くなってしまった。
あの時の熱が蘇るように、ただ芝崎さんに囁かれただけで感じてしまった自分が悔しくて唇を噛み締める。
「ホラ…俺の体冷たいでしょ?朝風呂入ろうと思ったらシャワー破裂して水被っちゃってさ…。ねぇ、愛奈が俺の体温めてよ」
「ぁっ、・・・んっあ・・・ゃ、ンんんっ」
お風呂借りに来たんじゃないの…?
最初に言った事とかみ合っていない芝崎さんの行動にそんな事を思うも、耳たぶをしつこく舐めながら耳元で囁かれ、自分でも膣が濡れていくのが分かった。
ぐいぐいと腰を押し付けてくる芝崎さんのペニスはもう固くなっていて、昨日の行為が嫌でも蘇ってくる。
また体を許したらきっと手遅れになってしまう。戻れなくなってしまう。
だって、芝崎さんに触られただけでこんなに私…濡らしちゃってる…。
<つづく>
次回は4月22日(月)20時に更新!
ダメだ、イヤだと思っているのに、愛奈の体は弘人を求めているー。ますます続きが見逃せない!
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