「双子っ!?」
確かに良く見れば、髪と目の色が違うものの、姿形はそっくりだ。
姫奈子が双子ということにすぐに気付かなかったのは、身体の色が違うせいもあるが、右京の髪は軽くウェーブがかかっており、左京の髪はストレートのせいもあるだろう。
それに雰囲気も全く違う。右京は明るく華やかな雰囲気があるが、左京はどこか暗くて冷たい。
「左京は生まれつき身体が弱くてね。昔からヒキコモリで、今もこの邸の部屋でパソコンを何台も使って株やプログラミングの開発をしている。でも商才はあって、結構稼いでいるよ。ボク並みにね」
右京は壁から離れると、真っ直ぐにベッドに歩いて来る。
「姫奈子はどうして自分が選ばれたのか、ずっと不思議に思っていたんだよね?」
「えっええ……。だってわたしなんかより、右京さんに相応しい女性はいっぱいいるから……」
「正確に言うとね、姫奈子を選んだのはボクじゃなくて左京なんだ」
「えっ?」
右京はベッドに上がると、左京の顎を掴んで姫奈子の正面に向かせる。
「あのお見合いパーティは左京の為だったんだよ。親からそろそろどちらか結婚しろと言われてね。まあボクはともかく、左京は自ら妻を選ぶことなんてできない。だからあのお見合いパーティで、左京が気に入った女性とボクが結婚をするという計画だったんだ」
「そっそれじゃあ右京さんはわたしのこと……、本気じゃなかったの?」
この三ヵ月、注がれた愛情が偽物だったと思うと、胸が裂けるほど苦しい。
いくらヒキコモリの双子の弟の為とは言え、嘘の結婚生活を送ってきたのかと思うと、悲しみの涙が流れそうになる。
「……最初は左京の為だったんだけどね」
しかしどこか切なさを含んだ右京の声を聞き、姫奈子はゆっくりと顔を上げて夫の顔を見た。
「でも姫奈子と一緒に過ごしていくうちに、キミの飾り気のない素直さや愛らしさに、いつの間にかボクまで惹かれていたんだ」
「右京さん……。でも左京さんはいつ、わたしのことを選んでくれたの? わたしの記憶じゃああのお見合いパーティの時にしか、会っていないような気がするんだけど……」
「……ああ。あの時、ハンカチを差し出してくれただろう? ずっと返さなきゃと思っていたんだけど……、なかなか声をかけられなくて。だから兄貴に近付くように頼んだんだが……」
ボソリボソリと話していく左京は、それでも必死に姫奈子に想いを伝えようと頑張っている。
「兄貴がオレと同じく姫奈子を気に入りだして、もう結婚して妻にした方が良いって言われて……。オレは人前に出ることが苦手で、兄貴がせっかく計画してくれたお見合いパーティにも何度参加しようとしても、具合が悪くなって結局一度も出たことがなくて……。だから結婚をするのは、兄貴の方が良いと思ったんだ」
どうやら人前に出ることが苦手な為に、結婚式を挙げることを考えると兄の右京に代わりにやってもらった方が良いと思ったらしい。
「……あっ、もしかして、この邸に来てから感じていた視線って……」
「うん、やっぱり姫奈子は勘が良いね。この邸は確かにセキュリティー会社と契約しているけれど、左京が設置した監視カメラもあるんだ。見ているのはもちろん、左京だよ」
「やっぱり……」
監視カメラ越しに、どこか人間の感情を感じていたのは、姫奈子を密かに思い続けた左京の視線だったのだ。
「長年ヒキコモリのオレなんかより、兄貴の方が姫奈子も結婚するには良いだろう? でもやっぱり、どうしても抱きたくなって……」
「実は左京にとって、さっきのセックスが初体験だったんだ。どうしても姫奈子を一度でも良いから抱きたいと言ってきてね。いつもならあまり飲まないワインで、自らを奮い立たせるほど頑張ったんだよ? ボクらは双子だし、薄暗い部屋の中なら気付かれないと思ったんだけど……。やっぱり姫奈子はスゴイね」
「変な感心ね……」
「褒めているんだよ。だってキミはボクと左京、両方に選ばれた花嫁なんだから」
そう言って右京は優しく姫奈子の顔を両手で包み込むと、キスをしてくる。
「んんっ……、はあっ……ああんっ」
唇を重ね合わせながらも、開いた隙間から右京は舌を差し入れてきた。そしてゆっくりと丁寧に、姫奈子の口の中を舌で愛撫していく。
(ああ、いつもの右京さんのキスだわ……)
ぼんやりとしながらも、姫奈子はいつもの右京のディープキスにどこかほっとする。
けれど視界の隅に、どこか落ち込んでいる様子の左京を見て、ふと我に返って右京の胸板を押して唇を離す。
「まっ待って。左京さんが……」
「ん? ああ、放っておいたらかわいそうだね。左京、こっちへおいで。姫奈子の肉体のことを教えてあげるよ。どこをどうしたら、感じるのかをね」
「うっ右京さん!?」
あまりに想定外の夫の言葉に、姫奈子は眼を丸くする。
「だって言っただろう? 姫奈子はボク達の妻なんだって」
「まっまさかっ……!」
「うん、これからは堂々とボク達の相手をしてもらうよ」
「ふっ二人同時にっ!?」
「そう。だって姫奈子もさっき抱かれた時、満更じゃなかっただろう? ボクじゃないと気付きつつも、肉体は悦んでいたんじゃないのか?」
「うっ……」
思わず言葉に詰まる姫奈子を見て、左京は「ふふふっ」と楽しげに笑い、右京はポカーンとしている。
「ボクは外に出ている時が長いから、その間に姫奈子が浮気しないか心配なんだ。だから左京といてくれた方が、安心できるんだよ」
「……わたしからしてみれば、右京さんの浮気の確率の方が断然に高いと思うんだけど」
「それは嬉しい心配だけど、ムダでもあるね。だってボクも左京も、キミに決めたんだから」
「わたしは……二人のお嫁さんなの?」
「そうだよ。そう言っているじゃないか」
右京は蠱惑的な微笑みを浮かべながら姫奈子の身体をベッドに押し倒し、うっすらと汗が滲む首筋をツーっと舐める。
ピクッと反応をしながらも、姫奈子の視線は少し離れた場所にいる左京へ向かう。
左京は戸惑った表情を浮かべているものの、それでも部屋を出て行こうとしない。それどころか右京と絡み合う姫奈子に、熱い眼差しを向けている。
(わたし、どうして抵抗しないの? 「イヤ」って言えば、きっとこの状況を変えられるのに……)
右京は姫奈子の桃色に染まった肌にキスマークを付けながらも、全く抵抗しないことに満足そうな笑みを浮かべていた。
「ねぇ、姫奈子。いつものように、口と胸でボクのペニスを勃起させてよ」
<つづく>
次回は4月15日(月)20時に更新!
右京と左京の二人にイジメられる姫奈子。次回はもっとエッチな予感…♡
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